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聖岳

日程 2008年9月22日〜23日
地域・山域 北アルプス
形態 ハイキング
メンバー 伊藤、清岡
報告 清岡

ルート/タイム

9/22 便が島登山口(11:33)〜西沢渡(12:23)〜薊畑分岐(16:10)〜聖平小屋(16:40)
[歩行時間:約5時間、標高差:約1400m(上)、100m(下)]
9/23 聖平小屋(5:00)〜薊畑分岐(5:25)〜小聖岳(6:27)〜聖岳(7:27)〜薊畑分岐(9:23)〜西沢渡(12:20)〜駐車場(13:20)
[歩行時間:8時間30分、標高差約850m(上)、2000m(下)]

9月22日(月)

今回の聖岳は8月に二回計画したが雨のため止む無く中止したリベンジ山行である。前日は日本全土のあちこちで警報が出る激しい雷雨があり、局所的な集中豪雨の被害や山間部では天候の回復が遅れるなどの不安要因の心配があったものの日程的なこともあり、兎に角、天候が回復する予報に期待をかけて出かけることにした。
 しかし、途中まで来て、その心配が的中したことを知った。
 南信152号線沿いのガソリンスタンドで給油したとき、昨夜の雨や被害状況などを問うてみると、遠山川沿いの登山口に至る林道に土砂の崩落があり通行止めになっているとの話。朝から土砂の取除き作業に掛かっているが詳細は不明とのことであった。他に代替えの計画や地図など持ち合わせていなかったので、兎に角、行けるところまで行くことにする。山間部の天候も回復が遅いようで上部は雲に覆われている。尾根あたりでは雨があったようで、聖平小屋では濡れた衣類を掛けて乾かしているのを見た。
 途中、土砂が道を塞ぎ四輪駆動の車高だかの車でなければ通行できないところが数か所あった。その手前の道端の広い数か所に車が数台駐車してあり、釣り人の車がいやに多いなあとその時は思っていたが、通行不能でそこから徒歩を強いられた登山者の車であることが後で分かった。
 下山してから帰り道を歩いている登山者に「よければ乗りませんか」と声を掛けた青年も早朝で普通の車であったため、その辺りから二時間ばかり歩かざるを得なかったとのこと。
 我々はラッキーなことに昼前と遅かったこともあり、大型ショベルカーが土砂を取除く作業をしているその合間に通過を許可してもらい、ようやくのことで便が島の登山口の駐車場に着くことができた。
 登山口である便が島の駐車場は、2キロ手前の光岳の登山口の昜老渡の駐車場とはくらべものにならない立派なところである。50台ばかり駐車できるアスファルトの広いスペースで、その一角に民宿風の聖光小屋がある。また、休憩用の立派な吾妻屋もたっている。
 道を隔てた、向い側には運動場のような広さのキャンプサイトがあり便所、炊事場から自販機まで完備されている。
 登山届を出し出発するが、ここから西沢渡までは遥か下の東山川の谷沿いの上部に作られた広い遊歩道のような道を一時間ばかりあるく。高低差のない広葉樹林におおわれた木漏れ日を楽しめみながらの歩きである。
 西沢渡は、30〜40メトル幅の川を渡るところであるが、地図では丸太橋で増水時は注意と書いてある。昨夜の雨で水嵩を心配していたが,西沢渡に着いてびっくりした。十津川にある駕篭でロープを引っ張りながら自力で川を渡るのと同じ原理の立派な渡し駕篭が掛かっているのである。
 両側に櫓が立ててありその間を鋼製で太いワイヤーで移動する駕篭が掛かっている。総て鋼製で出来ていて動かすためのロープが滑車で導かれている。それにザックを積み乗り込みロープを引張り動かすが、中間点が吊り下げワイヤーの最低部になるためそれより先の移動には、1.5m四角の鋼製の駕篭の自重をいれると数百キロの重さを動かすことになり、非力の人ではなかなか手ごわい作業となる。下山してきた単独行の中高年の登山者は我々のヘルプがなければ扱えないようで対岸で誰かの来るのを待っていた。
 聖岳の実質登山はここからの急登で始まる。広葉樹、カラマツ、トウヒの樹林の中を登山道がジグザックに続く。途中、150mほど谷の上部のロープが張られたトラバース個所は危険を感じるがそれ以外は歩きやすい山道である。川を渡ってから本日の最高点、薊畑の分岐まで、標高差1400mを三時間半で上り切る。そこから100m下る聖平に山小屋がある。
 県営で静岡県井川観光協会の管理のもとに営業をしている新しい山小屋である。4年前に再建された木肌や木目があざやかな木造りそのものとの印象を受ける。本館と棟続きの冬季小屋の二棟になっている。冬季小屋は年間解放していて、夏季営業中は主として自炊登山者が利用するような区別をしているようであるが、そちらはストーブなどないので、自炊者でも希望があれば本館で宿泊OKとのこと。自炊だけ冬季小屋で行い本館の方で休むこととした。真中に広い通路がありその両側が一列に寝袋を並べて休むような間取りであるが板間の上に発砲スチロールのシートを引きその上にゴザを敷き詰めてある行き届いた施設になっている。最近の山小屋はここまでいいサービスをするのか隔世の感がした。
 到着後すぐビールが飲みたく買おうとした。すると、今まで経験したことがない幸運が待っていた。
 本日が夏季営業の最終日で一般の宿泊者(自炊でない高い金を払っている人)にはビール、大きなオレンジそれにパック入りのジュースと緑茶までサービス提供しているとのことである。めったとないチャンスだからと、我々自炊者にもそのサービスの提供を受けてもらうことにするとの話であった。缶ビールにおつまみのチーズ一切れをもらい一気に飲み干し至福の一時を味わったところである。

9月23日(火)

翌朝は5時に小屋をでる。満点の星空がいやに近くに感じる。薊畑のあたりから夜が明け出し正面に大きく聖岳が聳え立っているのが見える。そこから未だ約600mの標高を稼がなければならない。
 5時40前後から東の空が茜色に染まりだした。ご来光の前兆である。富士山のシルエットがはっきりした輪郭を現わしはじめた。やがて、その北側の山波の一郭からご来光の眩いような光が差し始めた。感激の一瞬、カメラにおさめる。
 小聖岳の手前あたりから樹林帯が終わり風が強くなってきた。静かな大きな山を肌で感じながら登っていくと傾斜が急になくなり思いのほか早く山頂に着いた。少々風が強いが快晴で雄大な南アルプスの稜線が朝日に照らされている。赤石岳の小屋や縦走路の途中の百間洞の赤い屋根の小屋も確認できる。地図を広げて山名と尾根筋を照合し確認するいつもの行為がしばらく続く。次はあそこのルートであの山に行こうとの思いが駆け巡る。
 今回は夏シーズンの華やかなお花はほとんど終わっていたが、それが目当てでないことと相俟って、晩夏のこの季節の山は朝日もやわらかく登山者も少なく静かで、一味違った良い味わいを十分に堪能することができた。
 30分の少し長い休みをとり十分眺めを楽しみ感激の余韻に浸りながら2000mを一気に下山した。本日の歩行時間は8時間半で、大半が急勾配の下山であるため、さすが両脚が悲鳴をあげた。

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広い遊歩道

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西沢渡の手動ケーブル

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薊畑の分岐道標

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富士山のシルエット

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小聖岳からの聖岳

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聖岳の山頂にて

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指呼の間の赤石岳


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