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唐沢岳・幕岩 畠山ルート

日程 2008年10月11日(前夜発)〜13日
地域・山域 北アルプス
形態 アルパインクライミング
メンバー 佐々木、岡本
報告 岡本

10月11日(土)

3連休の初日は雨の予報だったが、予定通り前夜発で七倉を目指す。今回は3ヶ月前のリベンジ山行だ。
計画では、まず初日はセオリー通りに「大凹角ルート」、2日目「畠山ルート」、最終日は下山、の予定。
早朝まだ暗いうちに七倉の駐車場に着くが、同時に雨が降り出す。駐車場に停まっている車の大半は、紅葉目当ての観光客かハイカーだろう。
明るくなるまで少しの間仮眠を取るが、明るくなってからも強くはないが外は相変わらずの雨。こりゃ今日はダメだと予定を変更し、今日はアプローチのみとしゆっくりと出発することにする。
タクシー運転手の話ではもう数名のクライマーをダム下まで運んだということだし、駐車場にはクライマーらしき姿もある。7月の3連休にはひとりのクライマーにも会わなかったが、やはり幕岩はこの季節の方が人気があるのか?
8時頃には雨も止んだので出発準備をして、湯俣へ温泉を掘りに行くというユニークな学生グループとタクシーに相乗りし、高瀬ダム下で9時にタクシーを降りる。
歩いても1時間ほどの距離だが、やはり有難い。この辺りの山は見事に色づいて素晴らしい眺めである。なんだか空も明るくなってきて、俄然やる気が出てくる。
ここよりカラ沢に入り幕岩を目指す。
今回はアルミ梯子の掛かった堰堤手前より、左岸の高巻き道を行くことにするが、フィックスはしっかりしているものの結構な急登だ。最後はフィックスロープに頼って、金時の滝のすぐ上の河原に降り立つ。
ここでダムからちょうど1時間強。あとは河原を右左と適当に渡りながら進み、11時半にワシの滝下。
大町の宿にはツェルト2張りがあるが、既にどこかのルートへ行っているようだ。空いたスペースに2人用テントを張ったところで、続々と他パーティーが上がって来た。
大町の宿はもういっぱいで、他のパーティーは神奈川の宿、B沢河原、右稜のコルへと散っていった。愛知の2人以外は、大阪、兵庫、奈良の関西勢ばかりというのも面白い。
さて「大凹角ルート」は下山日にまわすことにして、この日は「畠山ルート」取り付きの確認をしただけで後はゴロゴロして過ごす。雨も大したことはなかったので、岩は案外濡れていないようだ。
やはりみんな考えることは同じで最終日は「大凹角ルート」を考えているパーティーが多いようだ。明日も数パーティーが「畠山ルート」に取り付くようなので、早起きを決め早々にシュラフに入る。

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高瀬ダム

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カラ沢のアプローチ

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幕岩が現れる

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正面壁〜中央カンテ

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大町の宿は快適な岩小屋


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10月12日(日)

4時前に起床、素早く食事を済ませてテントを出て、5時半に取付きに着く。
まだ暗いというのに既に2パーティーが取り付いており、先頭パーティーはもう3ピッチ目を登っている。
準備をしている間に明るくなり、今日は天気が良さそうだ。
ギヤを身に着けて握手を交わし、「それじゃーヨロシク!」と6時に登攀開始。

【1ピッチ目・佐々木リード】
草付きルンゼを50mいっぱいにロープを伸ばす。残置ピンはほとんど無く、朝一番なので気をつけて行く。
ビレイ中に前のパーティーが落としたヘッドランプが降ってきた。しばらくするとその先行の2人パーティーが敗退すると降りて行った。

【2ピッチ目・岡本リード】
前半は草付きでブッシュにランニングビレイを取り、途中濡れた岩を数ポイントのA1で越えたあとチムニー下のビレイポイントへ。足元の大岩が浮いており注意する。
下のB沢の方を覗っても後続パーティーが登って来る様子はない。結局、我々と先行の兵庫労山パーティーだけのようだ。

【3ピッチ目・佐々木リード】
ルート図には赤茶けたチムニー下を右から回りこんでチムニー左壁を人工で上がるとある。
チムニー直下まで上がってからトラバースするのかどうか迷ったが、結局は目に入った古いスリングの垂れたボルト目指して素直にトラバースすればよかった。
しかし引っ張れば落ちそうな不安定な岩もあり、慎重にカムをセットしながら左壁へトラバースし、前傾壁をA2で上がった後、快適なボルトラダーをこなしハング上でビレイ。

【4ピッチ目・岡本リード】
ルート中の核心部であるので、スッキリした気持ちの良い岩のピッチをフリーで行くものと想像していた。
何のことはない、草付きと濡れた汚い壁を使ってフリーで登る、全然気持ちの良くない凹角のピッチだった。草付きも引っ張ればすぐ抜けてしまいそうで、手で押さえつけるようにしてホールドにする。ピンは案外しっかりしている。
最後はスベリ台状テラスに出ると安定したビレイ点がある。

【5ピッチ目・佐々木リード】
凹角のクラックから、気持ちの良い乾いたスラブを三寸バンドに向かってフリーで登る。
このピッチはルート中で一番気持ちの良いところだ。三寸バンドはバンドとは名ばかりの狭さで、トップはそれと判らずに右上し、その先の立木でピッチを切ってしまう。
岡本が更に次のピッチをそのまま上へと登ってしまい、ハングに阻まれ前進できなくなる。クライムダウンするのも怖いので、捨てビナを残置してロワーダウンで本来の三寸バンドへと戻る。

【6ピッチ目・岡本リード】
狭いバンドを左へトラバースしてから草付きを登り、メガネハング左をアブミでトラバース気味に越える。ブッシュの後、スラブ手前でピッチを切る。

【7ピッチ目・佐々木リード】
傾斜の緩いスラブを左上して大広間テラスへ。

【8ピッチ目・岡本リード】
ここから上部壁が始まる。
最初はクラックからブッシュを登りテラスへ。クラックではピンも見あたらなかったのでカムが有効だった。

【9ピッチ目・岡本リード】
写真で見覚えのあるフレーク状のクラックにカムをセットしてフリーで上がり、ルート解説通り、チムニー右横のコケコケの見るからに汚いフェースに打たれたボルトに沿って人工で登る。
ブッシュの後、再びボルト連打のフェースからカンテを左に乗っ越し、50mいっぱいで潅木でビレイ。ここで先行パーティーに追いつく。
でもなんか変だなと思いルート図を確認して、ほぼ2ピッチ分をまとめて登ったことに気付く。

【10ピッチ目・岡本リード】
カンテを左に越え人工でフェースを登る。左へ行くとオリジナルルートに入ってしまうので、直上ルートをはずさないよう気をつけていたつもりが、途中からブッシュに突っ込む。この辺りからルートが怪しくなってきた。はたしてこれで合っているのか?

【11、12ピッチ】
右へと意識しながらブッシュ帯につけられた踏み跡を辿るが岩は現れない。訳が判らないまま2ピッチ分を進むと、あっけなく赤布の下がった西壁ルンゼへのトラバース道に出て、16時30分終了。

あまり時間もないので、休憩もそこそこに下降に移ることにする。比較的新しい赤布に導かれて、下降路である右稜の頭へ続く西壁ルンゼまでトラバースする。ここまではよかった。
ルンゼを少し降りたところで左の方向へはっきりした踏み跡が続いていた。これに騙された。踏み跡を辿って行き下方を見ると、どうもこの先は右稜ではないようだ。でも確かに赤布はすぐそこまではあった。
「おかしいな〜、変だな〜」「とりあえず上まで戻ってみるか?」「こっちはどうかな?いや、違うな〜」
ルート図を確認してみる。
「いや、やっぱりこれで合ってるはず。」
そんなことをやっているうちにすっかり暗くなってしまった。このまま下降路を探しておかしなところでビバークするくらいなら、ここでビバークしようということに決定。
ルンゼ上部に平らな場所を探し、雨具の上下を着ただけで横になる。「うぅー、寒ぅぅ〜!」
用意周到な佐々木さんは、シュラフカバーに色々と着込んで、横で寝息を立てている。こっちは時折うつらうつらするも、朝までほとんど眠れなかった。

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暗いうちから登攀準備

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燃える幕岩

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2P、ブッシュがうるさい!

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3P、チムニー左壁を人工で行く

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4P、登り出し

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5P、快適なピッチ

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上部壁

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山嶺第1ルートを登るクライマー

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9P、ビレイ点より


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10月13日(月)

夜が明けてから下降を再開する。
西壁ルンゼを昨日よりも更にまっすぐに降りて行くと、あったあった、ありました。右稜の頭へと続く踏み跡が。こんなことなら昨日も素直にまっすぐ降りて行くべきだった。
右稜の頭からは計7回の懸垂下降で右稜のコルに立つ。
テントに戻って、暖かいものを食べてからゆっくりと撤収し下山する。
帰りは金時の滝のガリー経由で下る。ダムからは大阪のパーティーと運良くタクシー相乗りで七倉へ。聞けば、朝から大凹角を3時間で登ってきたらしい。早いですね・・。
そして薬師の湯で汗を流した後、奈良へ帰る。
結果的に「大凹角ルート」は登ることは出来なかったが、来年の楽しみとしておこう。

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右稜の頭より懸垂

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大洞穴ハング

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秋晴れの下を下山する

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