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黒石谷下部遡行

日程 2006年9月2日(前夜発)〜3日
地域・山域 台高
形態 沢登り
メンバー 佐々木、尾崎、浜矢(大津岳士会)、木下(無所属)
報告 佐々木

9月1日(金)

浜矢さんと弥山川一の滝から双門の滝までの遡行・登攀を計画しもうかれこれ四年の歳月が流れようとしている。厳しく難しい谷である。ひと雨降るだけで全ての者の入渓を拒み、ゴルジュ帯の中で降られると脱出の道はない。幾度雨に阻まれ、幾度敗退しただろうか。今年の六月にやっと一の滝から三の滝、さらに巨大チョックストーン直下までの遡行・登攀を完了し、ついに双門の滝と巨大チョックストーンを残すのみとなった。
最後の詰めである。今回は週間予報も晴天を伝えており、ついに最後の時を迎えるのだというモチベーションも高まっていた・・・・にも関わらず木曜日から金曜日にかけての突然の土砂降り。予報はどうなってるんじゃい!と怒鳴ったところでどうすることも出来ず落胆の中での黒石谷遡行となった。
いつも通りに19時過ぎに浜矢さんをピックアップし一路川上村へ。ビバーク地点は村内某所。今回そこでは初めてのビバークであったが極めて快適で心底気に入ってしまった。尾崎さんの持ち込んだサンマに舌鼓を打ちながら楽しい夜を過ごした。テントいらず。ゆったりスペース。風雨夜露の心配なし。ただしゴミはもちろん、床の汚しも御法度である。トラブルを起こさずに末永く使用させて頂きたいものである。

9月2日(土)

本沢川と黒石谷との出合い入渓 → 林道終点上部のゴルジュ帯入口

6時起床。のんびりと朝の準備をして7時半に出発。ムラダチ谷への北股林道を左に見て右折。さらに奥に進むと2〜3軒の民家が現れ道は大きく右にカーブし橋を渡ってすぐに左に切り返す。橋を越えた辺りに車を止める。橋の下が黒石谷である。谷に沿って約3kmくらい林道が付いているが仕事以外は車止めで進入禁止となっている。
早速装備をととのえて入渓する。昨年は骨折のため一年を棒に振り遡行は二年ぶりである。下降して即釜泳ぎである。今回は降雨による増水とルートそのものがゴルジュであるため全員ライフジャケットを着用した。静かに体を水に沈めていくとなんとも言えない冷たさで引き締まる。二年ぶりの感触である。次から次へと釜を泳ぎ、小さな滝を越えていく。爽快である。右岸には付かず離れず林道が走っている。ガイドブックには林道終点にある駐車スペースからの入渓となっているが、どうして林道脇のゴルジュ帯もなかなかのものである。圧巻は駐車地やや手前のゴルジュ突破であった。4m位の滝から流れ落ちる水がそのまま正面の大岩にぶちあたり大きく右に流れを変えてさらに屈曲しながら下段の淵に流れ込んでいる。万が一流れが大岩の下に巻き込まれていると結構やばい感じである。ザイルを装着して浜ちゃんが大岩前の流れを突破し滝下左岸のクラックに取り付く。なんとかリスを探しながら攀る。さすがに沢屋である。確実にプロテクションを取りながら越えていった。一日目はガイドブックにある入渓地点のゴーロ帯を越えて2m・末広の8mを越えて激流渦巻く廊下を眺めて「こりゃあかんわい」と巻き上がって終了とした。2時であった。
 小一時間で車に戻り五色湯へ。体がふやけるほどゆっくりと湯につかり、尾崎さん御用達のお好み焼き屋「杉」へ移動。屋台感覚の美味しい店で、ゲソ焼きが美味くて二皿もたのんでしまった。それにしても二人の飲むこと飲むこと。まさにウワバミ。完全に出来上がってしまって昨晩と同じ宿営地へ。今夜は木下さんを待たなければならないが出来上がっている二人はマットを敷くなりごーごーと寝てしまった。心地よい温泉疲れもあってうつらうつらしていると21時前に木下さん到着。すると二人とも待っていたかのようにむっくりと起きあがってきて、木下さんの持ってきた酒の肴でまたまた飲む飲む飲む。とても付き合いきれない私は少し頂いて先に休ませてもらった。

釜を泳ぐ

流れに抗して

水瀑の廊下

水瀑を攀る

やべ〜はまりそう


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9月3日(日)

前日のゴルジュ帯を巻いて入渓 → 枝谷の出合い手前の広幅のナメ

6時起床。所用で急遽帰宅しなければならなくなった尾崎さんと交代するように木下さんが入り3人で昨日の終了点のやや上から入渓する。降渓するとすぐに現れる5mの滝は釜を泳ぎ左岸の壁をへつりあがる。しばらくゴーロ帯を行くと大きな淵が現れる。奥はトユ状の滝から大量の水が吹き出ている。淵の中の流れは速い。トユの左岸は斜度もゆるそうで取り付きさえすれば登れそうである。浜ちゃんが空身でへつる。ライフジャケットを着用しているので流れに巻き込まれることはないと思いつつも緊張する。2番手は私である。ザイルをカラビナに通してフリーでへつる。流れに負けると下半身が浮き上がり水流に引っ張られ壁から体がはがされそうになる。指先でなんとか岩のシワを探しながら耐える。足場がない淵から5〜6kg近い装備を付けたまま水から上がるのも一苦労である。必死のパッチで岩にしがみつきながらなんとか越える。トユの上で沢はやや開け末広がりの斜瀑が現れる。普段の水量なら斜瀑の中央の岩面は露出しているが増水時なので斜瀑全体が真っ白な流れに覆われていた。釜を泳いで取り付き水がかかるヌルヌルの斜瀑の左岸側を攀る。抜け口の左岸の木の根にザイルをかけやや懸垂ぎみに流れ口に下降し確保したままジャンプして渡渉する。しかし、浜ちゃんはほんによう飛ぶ人である。
その後の記憶ははあまりない。とにかくよく泳いでよく攀った。男女滝を越えて大きな釜を持った7mくらいの滝が立ち塞がる。右岸が弱点であることはよくわかる。しかし、流れ口から凄い水が噴き出している。「戸倉のF3の抜け口みたいだ。水量が少なければ回り込める簡単な滝なんだろうけど今回は無理ぽいね」と巻き上がろうとすると、なんと浜ちゃんは突破するという。どうしてあの滝口を抜けるのか。行くというならビレイするしかない。二人で釜を泳いで右岸から取り付く。水中からの脱出に何度か失敗して釜に落ちる。バンドを伝って滝の流れに近づくと安定した足場に辿り着く。浜ちゃんの登攀が始まった。四カ所プロテクションを取りいよいよ滝口に登り詰める。流れに逆らって回り込むか。とても無理である。しばらく考えた後、滝口のすぐ右岸に縦に走っているクラックにルートを見つけ攀り始めた。ややかぶっており滝口ということもあり慎重である。さらに四カ所のプロテクションを取って抜けていった。3人が抜けきるのに1時間15分かかってしまった。その上は明神の滝である。凄い水量である。周りは水煙で煙るほどである。しばし見とれてしまった。その後滝左岸の巨大岩のトンネルを抜け壁を攀り明神を越えた。これより先はつい先日浜矢さんと木下さんで大台のスカイラインまで抜けたとのこと。当初から今回の遡行はここまでとなっていたようである。そこから簡単に仕事道に巻き上がり、なんともぶっそうな丸木橋を渡り15時半に車に帰り着いた。

とても行けねぇ〜

明神の滝 水煙の中で

明神の滝

明神の滝を抜けて

恐怖の丸木橋


※ 写真はすべて2日目です。

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