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剣岳・北方稜線

日程 2007年8月12日〜14日(前夜発)
地域・山域 北アルプス
形態 縦走
メンバー 米原、宮西
報告 宮西

ルート/タイム

8/11 天理発(20:30)
8/12 馬場島着(3:00)→馬場島発(8:40)→早月小屋(14:00)
8/13 テント場(5:30)→剱岳山頂(8:25)→三の窓(11:25)→小窓(14:00)
8/14 小窓(4:40)→三の窓(6:50)→池ノ谷乗越(8:05)→剣岳山頂(10:00)→早月小屋(12:20/13:40)→馬場島(17:05)
8/15 天理着(2:00)

8月12日(日)

長い間心に秘めていた北方稜線に行ける日が来た。思いがけなく米原さんと私の意見が早月尾根で一致し、二人は30年または十数年ぶりで静かな山行をすることとなった。北方稜線といってもほんの入り口だけである。でも、池の平のお花畑もとても期待していた。
伊折の村は寂れていたし、馬場島の登山者は昔とは比較にならないほど少なかった。静かさを求める私たちにはありがたい。
馬場島の野営場は良く整備されていて快適な上駐車も無料である。テントを張って涼しく仮眠できた。
早月尾根は長いけれど、伝蔵小屋1km手前までは順調に歩ける。そこからがとても長く感じる。道も歩きにくくなり1時間もかかってしまった。一日目の歩いた高度差は1500メートルであった。
テント場には昼間ついたため日陰が全くなく暑―い。水は2リットル800円、トイレは原始的、虫がすごくいて帽子ではらってもはらっても寄ってくる。かなり劣悪なテント場である。おまけに関西のどこかの山岳会の中高年の夜遅くまでのマナーの悪さには辟易した。

8月13日(月)

2日目は池の平の小屋に泊まるつもりで、ビバークの用意だけして出発した。
森林限界をすぐ抜けると素晴らしい展望が待っている。早月尾根は剣沢からの道より岩稜帯が少なく、難なく頂上に到着した。頂上は剣沢から来た人たちですごく混んでいる。やっぱり早月尾根から来てよかった。
写真を撮って出発し、すぐに長次郎雪渓のチンネの時のビバークサイトを通過した。今年は以前よりも雪がたくさん残っている。長次郎の頭へは懸垂した横の岩場を登る。
あと踏み跡をたどり二人で岩稜のルートファインデイングを繰り返しながら池の谷乗越へ着いた。通過中長次郎の左俣、右俣と雪渓がかなり残っているように思えた。
乗越からは嫌な池の谷ガリーである。上部と下部はトレースらしきものがあるが、真ん中あたりが悪い。急な上、ガレるので気を遣いながら下る。やっと三の窓に着いたという気持ちであった。今回はテントが5-6張りあり、チンネには数パーティが取り付いていた。相変わらずチンネだけは人気がある。
ここから先は未知の世界である。小窓の王の急峻なガリーに上から降りてくるパーティ、下から上るパーティと驚くことに結構人が入っている。そういえばここまでにも何パーティかガイド登山を見かけた。今,北方稜線という名で山岳雑誌にも紹介されこのルートは人気らしい。
小窓へは見かけよりトレースがしっかりしていたし、距離も短いのであっという間に小窓の王南壁の下に着いた。この先も思ったよりトレースがあり、小雪渓に到着する。団体がフィックスを張り、たいそうなアイゼンをつけてトラバースしていた。斜度があるが午後の雪渓は腐っていて、私たちも念のために確保はしたがアイゼンなしでもいけた。
その辺から遠くに見える池の平小屋は標高差もあり、行けばまた、あの早月のテント場で寝るかと思えば明日中に帰りたくなった。ここ(小窓)でビバークして無駄な労力は省いて明日の18時までの馬場島荘の風呂に入ろうと二人の意見はまたもや一致した。
そうなると水の確保である。ガレ場を降り、水のしたたる雪渓の端でペットボトルや食器で1時間ほどかけて6リットルの水を溜めて小窓のコルに戻った。
テント一張りほどのスペースに16時半頃突然登山者が現れた。向こうも私たちに気を遣ってフライしかない私たちにマットを貸してくれ、テントを風よけに寝る場所を確保してくれた。昨日と打って変わって非常に素敵な夫婦とその友人の中高年の3人グループで、若い頃からずーっと山岳会に所属した筋金入りの人たちと一夜を快適に過ごした。私たちが明日同じルートを帰りますと言ったら、びっくりして「若いっていいわねー」のようなことを言われたけど、心の中で私たちはそんなに若くないんやけどと呟いていた。
小窓で寝るのは寒くはなかった(雪渓の横)けど、蚊には閉口した。寝てると顔やら頭やら食われて寝てられない。テントの中でも蚊がいたようだけど、私たちの食われ方は尋常ではない。2,400メートルにも蚊がいるなんて。剣の夏の稜線では虫対策が欠かせないことを身を持って学んだ。夜空はさすがに満点の星。フライだけで寝ているから流れ星がきれい。星雲も見える。

剣岳山頂

八ツ峰

長次郎の頭から続く岩稜帯

小窓王ガリーと池の平山

池の谷ガリーと三の窓

小窓小雪渓のトラバース

池の平へのお花畑


8月14日(火)

朝は3時過ぎに起きた。夜明け前の後立山連山が美しいシルエットをかもし出している。夜明けはいつも感動の一瞬である。
早々に出発、夜露に濡れたお花畑を愛でながら小雪渓に着く。朝はやはりアイゼンを着けないと雪が固い。
帰りは来たルートを引き返すとはいうものの、一つの難所を越えるたびに、あといくつと緊張を持続させながらこなしていく。長次郎の頭からはTさんに教えてもらったクライムダウンのルートをさがす。懸垂地点へ行く踏み跡と下に下る踏み跡の分岐を左に取り、行き詰ったところで上部の壁へ上がり捲くと比較的簡単にクライムダウンできた。しかし、この辺は高度感もあり慎重を期したいところだ。
あとはトレースを追い山頂に到着、ここでやっとヘルメットを脱いだ。山頂からは360度の展望。日本海、富士山などなど素晴らしい。
あとは急な鎖場を通過してテントで下りの長丁場に備えて大休止。エネルギーを補充して長い下りを下った。何とか風呂には間にあって、生きた心地が復活した気分だった。行動開始から24時間後に奈良に帰り着くハードな1日だったけど、たまには静かで、人力だけで行く山行きもいいものだった。

小窓からの夜明け,双耳峰の鹿島槍

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